まずはヘッドの角度を設定します。
アイモクさんから購入したネック材はヘッド角が約14度で出荷されています。ギブソンのレスポールはヴィンテージの場合は17度(ヒスコレなども)、現行のレギュラーラインだと14度となっています。
今回はヴィンテージを参考に17度で加工していきます。
ヘッドの角度チェックや角度の罫書きには画像の「プロトラクター」を持っていると便利です。
14度から17度に変更するには下記の赤いラインに沿ってヘッドを加工していきます↓
まずはバンドソーで線に沿って切断します。切断後は表面がガタガタなのでベルトディスクサンダーや紙やすりを使用して仕上げていきます↓
表面を整えた後↓
角度と平面がしっかり出てれば加工終了です↓
次にネック裏の加工です↓
位置関係を製図でよく確認しながらバンドソーで厚みを切り出していきます。この段階では完成予定値よりも2mmぐらい厚めに加工します。
ギター完成時のネック厚は1フレットで23mm、12フレットで25mmのネックを製作しようと思っています。※数値は指板の厚み(6mm位)を入れた数値です。この加工段階では指板の厚みは引いて下さい。
加工後↓
ヘッド裏は切り出し後に軽く直線を整えています。
次はネック幅をある程度カットします↓
この段階では実際の完成予定値より1~2mm位大きめにバンドソーでカットしておきます。
カット後↓
次にグリップ面の直線を出しておきます↓
加工は紙やすりを貼った当て板を使用し、スケールでしっかり直線がでているかチェックしながら削ります。
直線がでたらネックグリップの仮加工をします↓
今まで製作したギターと方法は特に変わりなく南京鉋や小刀などを使用して仕上げていきます。
※マスキング部はこの段階では削らない部分を保護してます
加工後↓
ゲージで形状のチェックをします。
次にトラスロッド溝を掘っていきます。実際にトラスロッドを置き位置決めをします↓
※この時に必ずトラスロッドを仕込む面が平面で直線が出ているかをチェック。平面でない場合はこの段階でしっかりと狂いを取り除きます。
トラスロッド溝は専用のテンプレートを使用してたわんだ溝をトリマーで掘っていきます↓
今回は溝の中心(一番深くなる箇所)は7フレットと8フレットの間にしました。(位置は僕の設定なのでヴィンテージに準じているわけではありません)
加工後↓
トラスロッドを収めてみましたが特に問題はなさそうです。
次はトラスロッドアジャスト部の加工↓
加工はテンプレートを使用しトリマーなどで行ったほうが早いですが僕はノミを使用して手作業で行います。
ここは掘る深さがそれなりにシビアな部分なので個人的には手作業で地道にやった方が性に合ってます。
加工後↓
この加工ではいくつかのチェックが必要になります。
パイプレンチが入らなければ当然ロッド調整が出来なくなります。またトラスロッドナットが表面に飛び出してしまっているとロッドカバーが平らに取り付けできなくなってしまいます。
トラスロッドナットが飛び出していないかはスケールをヘッドに当ててチェックします↓
※ヘッド表面に突き板を貼る場合はこの段階で多少出っ張っていても後で対処できます(突板を接着した時点で飛び出さなければOKという事)。
アジャスト部が終わったらロッド溝に収まる埋め木を作ります↓
作り方はFender系のギターと特に変わらずです。参考記事は下記をご覧下さい。
溝に隙間なく収まれば加工は終了です。
次に耳材接着の下準備をします↓
耳材とはギブソン系ギターに多く見られるヘッド両サイドの継ぎ足し部の事です。接着する前にはヘッドサイドをやすりなどで平面になるよう仕上げます。平面が不十分だと接着不良を起こし完成後徐々に剥がれるなどのトラブルが発生する事もあるので注意が必要です。
※耳材を接着する前の段階でヘッド幅は大体57mm~58mm位にしておきます。継ぎ足す耳材の幅はヘッドの寸法に足りていれば特に決まりはないです。
耳材接着の準備が出来たらトラスロッドの仕込みと同時に行います↓
※同時に行ったのは硬化待ち時間の節約の為。
次は接着した木材の余分な箇所を削ります↓
まずはトラスロッドの埋め木部分から。
加工は豆平鉋で直線に削っていきマホガニー部と同じ高さになればOKです。
加工後↓
同様に耳材もヘッドの表裏ともに平面に仕上げておきます↓
ここでも豆平鉋を使用していますが、鉋が入りづらい箇所はノミで仕上げています。
次にネックを逆反らせ、その後に真っ直ぐに削り直します↓
この作業をする理由が分からない方は下記記事の後半部分を参考にして下さい。
逆反らせたら手押しカンナで直線になるよう荒加工をしてその後紙やすりを貼った当て板で仕上げます↓
直線の確認はスケールで↓
次はヘッドを加工していきます↓
バンドソーで大まかな形にカットした後ヘッド用テンプレートを貼りトリマーで仕上げます。
加工後↓
ヘッド上部のくぼみはトリマーの刃が入らないのでヤスリで削っています。
次はヘッドに貼る突板を作ります↓
今回はメイプルの薄板(約1mm)を使用しています。外周は余裕をもってヘッドよりも少し大きめにカットし、その後にヘッドアジャスト部のみテンプレートに沿って加工します。
加工後↓
突板の加工が終わったらヘッドに接着していきます↓
※突板は薄い為接着時にボンドの水分を吸って非常に反り易いです。ヘッド全体を覆うしっかりとした当て板を用意し固定する事をおすすめします。
接着硬化後↓
特に目立つ隙間などなくしっかりとヘッドに接着できているようなのではみ出ている部分を加工していきます。
加工はマホガニー部の形をガイドにトリマーでトリミングしていきます↓
加工後↓
次に指板の加工をします↓
まずはフレットの溝切りをテーブルソーで行います。
詳しい方法は下記の記事を参考にして下さい。
加工後↓
溝切りが完了したら外周をカットします。
※この時の外周寸法はバインディングの厚みを引いた数値になります。
レスポールだと一般的にはナット幅約43mm、エンド幅約57mm位です。バインディングの厚みは約1.5mmで両サイドとエンドに貼られています。なので指板を加工する際は両サイドとエンドのサイズを各1.5mmずつ小さく加工します(ナット幅約43mm、エンド幅約54mm)
カット後は設定した数値のサイズになるよう慎重に削っていきます↓
荒加工はベルトディスクサンダーで行い、最終的には当て板などを使用して紙やすりで仕上げていきます。
※直線冶具などを使用してトリマーで荒加工しても良いです(欠けに注意が必要ですが)。
加工後↓
指板外周の直線がしっかりとでていればOKです。逆に直線が甘いとバインディングの接着が不安定になるので注意。
指板外周が仕上がったらバインディングを巻いていきます↓
使用するバインディングは素材がCAB(キャブ)のアイボリーカラーで厚みは1.5mmの物です。
購入は大和マークさんからです。
まず指板のサイドとエンド部の3つに切り分けます↓
※エンド部は長さがピッタリになるよう削っています。サイドは少し長めに切っています。
接着には同じく大和マークさんから購入したセルボンのキャブバージョンZZ-53を使用します↓
※セルロイド製のバインディングにはセルボンZZ-10推奨。
接着する時はセルボンを小筆でバインディングに素早く塗っていきます。
接着していく順番は指板エンド部が最初です↓
セルボンを素早く塗り画像の用にマスキングテープでしっかりと固定します。(マスキングテープを貼る時は指板の裏面から表にかかるように貼ります。)
エンド部は短いので簡単に終わると思いますがサイドは注意が必要です↓
サイドはバインディングを半分ぐらいまで仮止めしておいた状態にしておくと安定して作業ができます。接着する時は欲張らずに少しずつ距離を詰めて「セルボンを塗る→マスキングテープで固定」を繰り返していきます。
※セルボンは乾き易いので欲張ってたくさんの長さを一気に塗って接着しようとすると最初の方に塗った箇所は既に乾いてしまって接着できないなんて事がよくありますので注意。
接着完了後↓
この状態で乾燥を待ちます。
ばんば