まず初めに「手巻きピックアップ」の概念ですが業界において「手巻き」や「ハンドワイヤリング」と銘打っている商品は下の画像のような電動ワインダーを使用し、ピックアップボビンに巻き付けるワイヤーのテンションや幅などは指でガイドしながら製作されている物をほぼ指しています。
ちなみに「完全手巻き」で有名なK&Tさんは電動ワインダーは使わずアナログの手動ワインダーで時間をかけてピックアップを製作されています。
逆に「手巻きではないピックアップ」はワインダーやワイヤーを巻き付ける時のガイドなどのすべてが自動(オートメーション)になっている物があたります。(大手メーカーのダンカン、ディマジオなど)
今回は電動ワインダーを使用し指で巻き付けのガイドをしながら製作していくので「手巻きピックアップ」という事になります。
使用する機材やパーツなどの入手先は下記の記事を参考にして下さい↓
まずはリアピックアップを巻いていきます。
ピックアップボビン(マグネットはアルニコV装着)とワイヤー(ヘヴィフォームバー)はTONE KRAFTの物を使用します。
※初めて自作する方はピックアップボビンが完成済みの物(あとはワイヤーを巻くだけ)をおすすめします。
ピックアップボビンはワインダーに両面テープで貼り付けています。
画像ではワイヤーが確認しづらいですが指で軽くつまみながらピックアップボビンに巻き付けていきます↓
※強くつまむとワイヤーが切れるので力加減が重要になってきます。
ターン数は8300で巻き上げています。
このターン数で直流抵抗値は6.7K前後です。※ターン数は同じでもワイヤーの太さや巻き付け時のテンション、抵抗値測定時の室温によって数値は前後しますので参考程度にして下さい。
巻きあがり後の画像です↓
このピックアップは右が巻き始め(COLD)、左が巻き終わり(HOT)で製作しています。
フロントピックアップも同じ要領で巻いています。
使用しているワイヤーはTONE KRAFTのプレーンエナメルを使用しています。
ターン数は8000ぐらいで直流抵抗値は6.4k前後です。
巻き終えた各ピックアップには配線材をはんだ付けします↓
次は巻き上げたピックアップをポッティング(ロウ漬け)していきます。
ポッティングは人によってやり方はそれぞれあります。
僕の場合はまずIHヒーターにIH対応鍋をのせます。(鍋には水を張っています)水を張った鍋の中にロウが入った真空容器を入れ湯煎しながらロウを溶かしていきます。
直接真空容器を温めず湯煎しながらロウを溶かす理由は温度が上昇し過ぎない用にする為です。(IHヒーターは温度設定が出来る物を推奨)
ロウはパラフィンワックスと少量のマイクロワックスをブレンドして使用。
※基本的にマイクロワックスのブレンド率は購入した商品に記載されている割合で行います。
画像のようにロウが完全に溶けたらピックアップを投入していきます↓
ピックアップを入れたら蓋をして真空状態にしていきます↓
真空状態にする事によりピックアップから勢い良く泡が出てきますのでその泡が出なくなるかもしくは泡の勢いが弱まってきたらピックアップを取り出します。(僕の場合は30分~1時間程度)
※泡の量によってロウの浸透具合を判断します。浸透具合は各ピックアップメーカーにより様々です。一般的に浸透が多ければハウリングに強くなるが良くも悪くもサウンドは変わる、逆に少なければハウリングしやすいが音質はナチュラル傾向でダイナミクスも豊か。
取り出し後↓
コイル周りに薄くロウの膜が張っているのが分かりますでしょうか?
取り出したリアピックアップにはコイル保護の糸(ひも)の巻き付けとベースプレートの取り付けをします。フロントピックアップにはカバーを取り付けます。※リアピックアップのベースプレートは着磁後に取り付ける場合もあります。
糸は専用の物ではありませんが下記の物で代用しています↓
次に2度目のポッティングを行います↓
時間は1回目より短めにしています。(20分前後)
※ある程度のハウリング防止効果を得る為に2回目のポッティングを行っています。(ちなみにストラトなどのピックアップは1回で十分です)
2回目のポッティングから取り出したら余分なロウを拭き取り次にピックアップの着磁をしていきます。
画像のようにバイスの両サイドに付けたネオジウム磁石の間にピックアップ(ポールピース部)を何回か往復させて着磁しています。
リアピックアップは上面がS極、フロントピックアップは上面がN極で着磁しています(ミックス時にノイズキャンセリング仕様にする為)
着磁時の磁極確認には専用の工具を使用しています↓
黒=S極
白=N極
磁極も確認が出来ましたのでこれで完成となります。
ばんば