Q「ギター製作の専門学校へ行かなきゃよかったです」

ギター関係の雑談

 

一部の方からほぼ共通した内容の質問を頂く事があります(3月~4月に多い)。

個別の答えが大変なので下記に記載しておきます。これが万人に当てはまる答えにならない事はあらかじめご理解下さい。

 

質問をくれる方の共通点は「ギター製作の専門学校へ行ってた方」

 

もう少し詳しく言うと「ギター製作の専門学校卒業を機に自宅でギター製作が出来たらいいな」と思い最低限の製作環境を用意しチャレンジしてみたが上手くいかないと悩んでいる方。

 

最も多い質問↓

・ギター製作の専門学校へ行って意味があったと思っていますか?
・自宅でもなるべく学校と同じ工具を使用しないと良いギターは作れませんか?
・どうしたら売り物のような精度を出す事ができるようになりますか?
・学校では出来ていたのに同じような塗装ができません

 

 

Q・ギター製作の専門学校へ行って意味があったと思っていますか?

 

この質問と共にタイトルにある通り「ギター製作の専門学校へ行かなきゃよかったです」という方もいます。正直これは中々ショッキングなワードだと感じました。質問をした方はおそらく専門学校に行っても(卒業しても)意味がなかったと感じているのでしょう。

 

僕自身の事で言えば専門学校に入るまではギターは弾く事しか知らず当然メンテナンスや改造の知識はゼロでした。そんなタイプの人間が専門学校へ通う事は時代も考えれば自然であったと感じています。

専門学校へ行って学んだ事は今の自分で考えればあくまでギター製作の基礎的な部分(ほんの一部)でした。

ただ器用でもないし知識もない当時の僕は基礎を学ばなければ何も発展していかなかったと今でも思うのでこの質問の答えとしては「行く意味はあった」です。

卒業後は学んだ基礎に対して地道に知識や技術を肉付けしていくのが重要かと考えます。

ちなみに自己分析ですが1クラス数十人いる中で僕の技術やセンスは下から数えた方が早いぐらいだったかと思います。

 

Q・自宅でもなるべく学校と同じ工具(大型)を使用しないと良いギターは作れませんか?

 

そんな事はありません(と思う)。

そもそも学校と同じレベルで工具を揃えるとなるとかなりの金額になります。また大型工具の場合は設置する場所の確保も必要なので現実的ではありません。

たとえ「DIY」向けの工具だとしても求める用途さえ合えばギター製作に活用できます。

自宅(一般住宅)のような小規模とされる作業場にはそれに見合った工具の選定が必要です。

ギターの花道の作業場(塗装ブース除く)は4畳半ぐらいなのでなるべくそれに見合った工具を使用しているつもりです(バンドソーとボール盤はそれなりに大きいです)。それらで良いギターを作るのは十分狙える範疇(はんちゅう)にあると思っています。

※良いギターがそもそもなんなのかという定義が人それぞれだと思いますがあくまで日本人的な考えで言えば「精度が良くて仕上りが綺麗」というのを前提としそれに+α(音など)というイメージでしょうか。

 

Q・どうしたら売り物のような精度を出す事ができるようになりますか?

 

質問をくれる方がギター製作の専門学校でどの程度の技術レベルを有していたのかは分かりません。

ここでいう「売り物」は別の言い方で言えば「製品」とも言えますね。ギターを作る過程においてこの「製品」を作るという事は常に困難であり悩まされるテーマです。

製品といっても価格帯で仕上りや精度は当然変わってきますが質問してくる方の意図を予測するならば少なくても低価格の製品レベルではなくある程度の精度や仕上りをクリアしている価格帯の製品レベルの事だと思います。

ちなみに今の僕がギターを作る時は日本製の10万円前後が「製品レベルの最低目標ライン」というイメージでいます(バッカスとかフジゲンなど)。

 

それでは10万円前後の日本製ギターと同様の精度と仕上りで製作して下さいと言われてできる人はどれだけいるでしょうか?

主観ではありますが仮にギター製作の専門学校の在校生(高学年)が「学校の設備をフルに利用」したとしても正直できる人は少ないと思います。

 

例えば自分が作ったギターを楽器店へ納入して展示されるまでをイメージしてみて下さい。

楽器店がギターの細部まで検品を行い合格すれば展示されますがもし「このギターは仕上りが悪く売るには難しい」と判断した場合はギターは当然展示されず返品されます。

 

検品合格ラインの一例(10万前後の日本製ギターと同等レベル)↓

・ラッカー塗装、ウレタン塗装どちらの仕様においてもパッと見てしっかりと仕上がっているのが容易に分かり色むらや研磨むらなどがない(多少むらがあるものもあるが…)。

・木部加工の精度。ネックジョイント部やボディ全体の面がしっかりと出ている。ネックグリップの曲面が滑らかに仕上がっている。一部海外製ギターだとこの部分は多少甘くても許されがちだが日本製となるとそうもいかない。

・各パーツ取付位置に狂いがない(ズレがない)。

・フレット頂点やサイドの仕上げがスムースになっている(プレイアビリティと音程の確保が出来ている)。

・ナット溝の深さが適正。各開放弦の響きが正常。ローコードを押弦した時の音程の狂いが少ない。

 

上記は10万円前後の日本製ギターを例に挙げているのでそこそこシビアな条件をクリアしている必要がありますが、もう少し価格帯を下げたとしても求められる条件はそれなりにあると思います。その条件を自宅でのギター製作を始めて間もない人が容易にクリアできるでしょうか?

結論として初めのうちは製品レベルを作れなくて当たり前ぐらいに思っていた方が良いと思います。

 

もし製品レベルにしたいのであればやれる事の1つとして「目標とするギターの細部を地道にコピーする事」です。

例えばナットやフレットサイド処理の形状を真似たりなど。つまりはよく観察するという事です(無理でなければ目標のギターを所有するのが好ましい)。

その他には上記工具の質問にも関連しますが「製品レベルへ近づける事を目的とした自分に合った工具」を早く見つけるのも大事です。工具を惜しんで技術力のみで精度を出すのにはいつか限界がきます。

 

Q・学校では出来ていたのに同じような塗装ができません

 

これも当たり前ではないでしょうか。

自宅での塗装設備がどのようなものなのかは分かりませんが、設備が整った学校の塗装ブースでさえ上手くできる人は一握りだったような気がします(先生に手伝ってもらいながら上手く仕上げる人はいましたがそれはその人の実力ではないので…)。

自宅環境ではそれに見合った塗装のやり方を地道に見つけるのが大事になってくるかと思います。

僕もはじめのころ自宅での塗装は勝手がよく分からず失敗の連続でした。というより現在でも失敗はします。とはいえ続けていく中で失敗回数は徐々に減ってきましたが。

 

ちなみに僕が塗装で注意してる事の一部↓

・塗装前はブース内に霧吹きで水をまきブース内のほこりやちりを床に落とす。霧吹き後は空気中の水分が落ち着くまで数分待ちます(かぶり防止)。これを一回一回行うので塗装を吹き付けるまでの準備時間が毎回それなりに掛かります。この作業を僕の環境下で怠った場合ほこりやちりが塗膜にかなり混入する事になってしまいます。

・原因究明。失敗した時の状況を覚えておく。作業にもよるがメモしておく時もあります(塗料の配合比がおかしいとか吹付時のスプレーガンの設定値など)。

・艶出し研磨は「新品」を作る意識を持つ。新品には目立つ傷がないのが基本(僅かなクロス拭き傷などは除く)。「どうせ使っていればこれぐらいの傷はすぐ付くし」という考えをしているといつまでたっても磨き作業は上手くならないので。

・塗装で失敗した時に挽回しようと急いだり焦ったりしない。また「まっいいか」という妥協はなるべくしないようにし作業を無理に終わらせようとしない。場合によっては最初からやり直す勇気も必要。

 

多くの人が専門学校を卒業した程度では経験値があきらかに足りてません(僕もそうでした)。「専門学校を卒業したらプロですか?違いますよね」。その後いかにギターを作り続けるかが大事なのでは。

ばんば

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