指板潤滑剤と言えば指板上での運指を滑らかにする目的で弦に吹きかけるスプレー式がよく知られていると思います。
商品として有名な下記の物が定番です↓
僕が楽器店のスタッフだった頃はお客さんには「指板潤滑剤を使用する際は指板に吹きかけないようにして下さい」と注意を促していました。
残念ながらいくら注意を促しても手早くスプレーを吹きかけたい人の中には指板の保護をせずに直接スプレーを吹きかける人がいます。
- クロスなどに一度スプレーを吹きかけてから弦をクロスでつまむ様に拭く
- 弦と指板の間に紙などを挟んでからスプレーをする
最近の話なのですが上記で説明した「指板の保護をせずに直接スプレーを吹きかける」を長年続けてきたギターをお預かりする機会がありました。
それがコチラです↓
このギターはフレット交換をする為にお預かりした物です。メーカーはフェンダージャパンです。察しの良い人なら分かるかと思いますがフェンダージャパンにしては不自然なくらい指板がとても黒々としています。(指板材はローズウッドです)
このギターの場合はフレットを抜く時に不自然なくらい「スッ」と抜けました。そしてフレットを抜いた溝を覗くと少し汗をかいた様に湿っぽい感じになっていました。
ちなみにフレットを抜く前のギターの状態はハイフレット部の指板が起き上がっており、15フレット以降で音詰まりがしてしまう状態でした。それを裏付けるかの如く一番湿っていて黒々としていたのはハイフレット部です。
上記の状態がとても気になり持ち主に質問をしました。
・「レモンオイルとかオレンジオイルで粘度が低い物(シャバシャバなオイル)を頻繁にたっぷりと塗っていますか?」
・「ライブとかで汗をかき、その汗が指板にものすごくかかったりしますか?」
そして持ち主の答えは「汗はあまりかきません。オイルとかは今までほぼ塗った事はないです。けれど弦の滑りを良くするスプレーはいつも使用しています。(指板にも一緒に吹きかけている)」
これを聞いて指板全体が不自然に黒々と変色している事、尚且つフレット溝がかなり湿ってしまった大きな要因は直接スプレーした潤滑剤が指板に染みすぎている事に間違いないと確信しました。
今回この潤滑剤が多く染み込んでしまった指板はハイフレット部での指板起き上がりに加え、フレット溝がとても柔らかくなっているので新しいフレットがしっかりと食いつかない恐れなどがありました。
なのでフレット溝内部を洗浄(脱脂)してしばらく放置した後に指板全体がよく乾いてからフレットを打ちました。今回はこれで事無きを得ましたがひどい場合は指板を張り替えないといけないかもしれません。そうなればかなり高額な修理になる事は間違いありません。
指板潤滑剤は商品によっては「指板に吹きかけても大丈夫」に近い内容の説明文、もしくはネット上で問題ないと言ってる人がいますが僕は今回の事がありましたので「絶対に指板には吹きつけないで下さい」と言いたいです。
※少量での使用や短期間だけなら今回説明した様な事は起きづらいと思いますが大切な楽器なら手間を惜しまず安全な方法で手入れをしていきたいものです。
ばんば